FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Entrance

『オルガネラ』へようこそ!

5/13 『ベルザンディの夜に』chapter.5-4 アップ


ここは戸岬真(とみさき・しん)のへっぽこオリジナル小説をのろのろ載せているブログです。

初めていらした方は『About』をまずご覧ください。
小説をお読みになる方は『Index』からどうぞ。

感想・誤字脱字指摘などなど、大歓迎です。
その他にも何かありましたらメールフォームもしくは拍手でお気軽にどうぞ。
メールフォームはアドレス必須になっております。ご了承ください。



このブログに掲載している全ての作品の無断転載等、ご遠慮ください。
スポンサーサイト

chapter.5-4


 覚えているか?
 問うと、カゲはきょとんとしてみせた。ジョゼを終始からかう様な、皮肉げな表情が消え、奇妙な疑問を投げかけてきた吸血鬼を、ただ呆然と見ていた。
 そうすると、リタ・ミラによく似ている。
 「突然何を聞くのかと思えば」
 カゲは肩をすくめた。
 「覚えてるはずねぇだろ。俺がリタのカゲになってんのは、あいつの遠い先祖が、俺の遠い先祖と契約だかなんだかを交わしたからだ。カゲとカゲツキとして共存するってな」
 「契約……」
 「そうだ。その契約とカゲの情報は、遺伝情報としてリタの血筋に組み込まれてる。リタが生まれたその瞬間から、俺はあいつのカゲだったってわけ」
 だから、こうなる前のことなんざ知らねぇよ。
 ひどくさっぱりとした答えに、ジョゼは微かに、しかし確かに、落胆を覚えていた。
 期待していたのだ。この奇妙な男――少なくとも今は――に、ジョゼは『答え』の一部を求めていた。
 落胆が、表情に表れたのだろうか。それともただの好奇心か――カゲは問うた。
 「なんだってそんなことを聞く」
 その言葉にからかいの調子はない。平坦な声が、リタ・ミラによく似ている。きつい目線は、彼女よりも大分男性的であった。
 その所為で、錯覚してしまう。夜の眷属としてあり得ない考えが生まれる。
 この男がまるで、リタ・ミラを守る騎士のように見えてしまう。
 「……興味があったんだ」
 半ば気圧されるように、ジョゼは答えていた。
 「どうして、お前が人間と共存する気になったのか――なにが、変わったのか」
 落ちた言葉は、ひどく乾いていた。
 ジョゼはもはや、言葉を続けることを止めていた。もともと多く言葉をつむぐ生物ではないのだ。不慣れなことをすれば疲れるだけ――と、言い訳のように決め付けて。
 黙りこくったジョゼに呆れたのだろうか。それとも別の感情を抱いたのか。
 カゲはひどく穏やかな声で言った。
 「俺には」
 その声は、リタ・ミラの平坦な声とは大分異なる。今までの彼の声とも、違う。
 湿っぽい、とジョゼは感じた。声が水分を含んでいるのだ。汗か涙か、体温を帯びた水分。
 「あんたが誰より、誰かと共存したがってるように見えるよ」
 
 哀れみ。
 水分を含んだ声の正体はそれであったが、その感情はジョゼには遠すぎた。
 理解できずに、言葉だけが宙に浮いた。



 人間の影に落ちぶれた、下等な者とまともな会話をしようとした所為だろうか。それとも中途半端に血を補給した所為だろうか。
 注意力散漫であったとしか言えない。
 (ああ、全く、慣れないことはするもんじゃない)
 帰り道、路地裏で、ジョゼは空を見上げて嘆息した。空に、月が出ている。
 月光が煌々と、彼の胸部を突き刺す刃を照らしていた。

 「滅びろ、吸血鬼め――」

 背後に、人間の気配。
 それが突き出したナイフがいつの間にか、ジョゼの体に大穴を空けていた。




now writing...

GW

でしたね。
私は特に何処にも行かなかったんですが、これから飲み会です。
雨なのに。
うう、この楽しみなんだけどめんどくさいような、微妙な気分は一体なんなの。

chapter.5-3

 「リタはどうにも、この煙草って奴が好きでな」
 現れたカゲは、ジョゼが何も頼みもしないのに勝手に話し出す。
 実に憎たらしそうに、パンプスの踵で地面に落ちた煙草を踏み潰している。
 「俺は嫌だね、くせぇし。しかもあいつ、好みのモンがないっつって自分で調合して巻きやがるんだ。止めろっつってんのに」
 ああ、苦い。
 言いながらカゲは、唾を吐き捨てた。口調も仕草もなにもかも、男性の、それもガラの良くない男性のものなのにもかかわらず、姿には何一つ変化がない。
 ひどく奇妙な光景であった。
 「この体が壊れちまうと俺も共倒れだからなあ、全く」
 「……共倒れ?」
 カゲが嘆息と共に呟いた言葉が耳に残り、反射的に聞き返すと、彼(としておこう、便宜上)は、目を細めて口の端を吊り上げた。
 笑っているつもりらしい。気味の悪い、笑顔であった。
 バランスが悪いのだ。
 「ようやく反応したじゃねえか。俺だけ一人でしゃべってんのはアホみてえだろ」
 どうも、ジョゼが何か話すのを待っていたらしい。
 彼の計略に引っかかったようで、ジョゼは憮然とした。
 「ヘソ曲げんなっての。――そうさあ、共倒れ。リタと俺は運命共同体ってやつなのさ」
 カゲはどこか誇らしそうに告げる。
 運命共同体。ジョゼには、耳慣れない言葉だった。
 「……気色悪いな」
 呟いて、俯いた。

 ジョゼにもかつて、それに近いような存在があった。
 リタ・ミラとカゲの関係のような、一心同体のような関係ではない。小説でよく語られる、吸血鬼とその下僕の関係でもない。
 ただ単純に――彼には妻がいた。遠い遠い昔のこと。遠すぎて、思い出す気にもならなかった。

 「……前のことを、覚えているか」
 問いは、思わずこぼれるように、言葉になった。
 声が小さすぎたからだろう、カゲが眉を寄せていた。
 「そうなる前のことを、覚えているかと聞いたんだ」
 「そうって?」
 カゲはケタケタと笑った。何が面白いのか、ジョゼにはわからない。
 「はっきり言えよ、吸血鬼さんよ」
 カゲの声はリタ・ミラと変わらない。変わらないはずなのに、どこか耳に障る。
 苛立って吐き出した息と共に、ジョゼは続けた。
 「お前が彼女のカゲになる、前のことだ」



chapter.5-4へ

chapter.5-2

 傷は跡こそ残っているものの、おおよそくっついてしまっている。ジョゼはそれをひと舐めしたが、ほんの少し舌先に味を感じただけで終わった。
 埒が明かない。
 仕方ないので、ジョゼはその傷に沿わせるようにして、牙をぐっと押し当てた。噛み切るのではなく、治りかけた傷を再び開くように。
 「いっ」
 さすがに痛かったのか、反射的に指が逃げようとするが、ジョゼは手首を掴む手に力をこめてそれを許しはしなかった。
 牙を押し当てたままにしていると、程なくそこから少しずつ、血が漏れ出してくる。それを、舌先で掬う。また漏れ出し、また掬う――
 「ねえ、私が思うに」
 「――――」
 リタ・ミラが何か言っている。が、食事中のため反応してやる気もせず(この女の発言はどうしたところで理解しがたいと諦めてもいた)、ジョゼは舌を動かし続けた。
 「首とか、その辺がセオリーじゃあないの?先に指を出した私が言うのもあれだけど、別に私はどこでも構わないのに」
 なるほど、確かにごもっともだ。
 ジョゼは返答代わりに、もう一度、先ほどよりも強く傷に牙を押し当てた。
 「痛っ」
 小さく叫んで、眉を寄せて睨んでくるリタ・ミラに、ジョゼは一瞬だけ食事を中断した。
 「少し黙っていろ」
 それだけ言って、また指を銜えた。

 最後にひと舐めすると、ジョゼは掴んでいた手首を離してやった。
 そう力を込めたつもりはないのだが、リタ・ミラは自由になった手首を抱き寄せるようにして、彼を睨みやった。
 「跡がついた」
 「……それは悪かった」
 「………悪いなんて思っていないでしょう」
 「…………まあ、そうかもしれん」
 力を込めたつもりなどないのだから。彼としては、リタ・ミラの手を口元に留めておきたかっただけなのだ。
 人間は脆い。どこで痛がるのか、どこで苦しむのか、どこで悲しむのか、見当がつかない。
 リタ・ミラの隣に腰掛けると、自然とため息が出る。ああ、疲れている。
 「……本当に元気がないのね」
 声が、聞き取りづらい。おかしいと思ってちらりと目だけ動かして見ると、リタ・ミラは再び煙草を銜えて、そのまま話している。
 その視線に気づいたのだろうか、煙草を一度口から離して、この女は見当違いのことを言ってくる。
 「……煙草、いる?」
 「いや、いらん」
 「ちょっと元気になるかも」
 「結構だ」
 「そう、つれないの」「それが正解だな」
 言いかけたところで、突然リタ・ミラの口調が変わる。
 ぎょっとして、今度は顔ごとぐるりと彼女の方を向くと、不機嫌そうに顔をゆがめて、ぷっと銜えていた煙草を吹き飛ばしていた。
 唖然としているジョゼに気づいたらしい、にやりと品のない笑みを見せた。
 「よぅ」
 リタ・ミラの身体を借りた彼女のカゲが、そこにいた。



chapter.5-3へ

プロフィール

戸岬真

Author:戸岬真
思いつきの小説を亀並みの鈍足スピードで更新しています。
なんだかんだいってファンタジー好きです。
そんでもってゲームも好きです。

にほんブログ村の小説ブログランキングに参加しています。
お気に召しましたらクリックお願いします。
ブログランキング・にほんブログ村へ

あ、『真』というのは『まこと』でなく『しん』と読みます。しかも女です。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

カテゴリー

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

登録しているサーチ様

ブログ内検索

RSSフィード

QRコード

QRコード
Copyright © 戸岬真
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。